今日は時期外れだと思われるでしょうがイサキについてお話しを進めたいと思います。ところで勝手に「時期外れ」なんて書き出しをしてしまいましたが、イサキについてどのくらいご存知でしょうか。食べたことある人~手を挙げてくださ~い!?
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ご協力ありがとうございます。
かなりの釣り愛好家や山口県の北浦地方を代表とするイサキ産地に暮らしてなければ、見たことも聞いたこともないかもしれません。ちなみに長門市出身のumisachiは魚名こそ知っていましたが、他の地域に暮らして近場の魚屋さんで見かけたことはありませんでしたよ。よくイサキは釣り人にブランド魚という呼びかたをされます。ここで言われるブランドという意味を考えたときに思い浮かべるのは、
- 食べて美味しい
- 旬の季節が短い
- あまり獲れない(つれない)
- 見た目が美しい
- どこでも釣れる魚じゃない
ということじゃないでしょうか。では、実際に漁業関係者が産地ブランドとして認定を行っているイサキをご紹介します。
ブランド名:値賀咲(ちかさき)
長崎県五島列島北部の宇久島、小値賀(おじか)島周辺、遠浅の海と島々に囲まれた早い潮の流れに瀬ついたイサキ。この中で値賀咲(ちかさき)と認定されるには、撒餌を使わず擬餌の手釣りによるもので、活け締めされたイサキを指します。さらにいくつか付帯条件が課せられており、
・400g以上である
・ウロコの状態がよい(すれ等がない)
・魚体の色がよい
といったイサキを漁協職員が認定し、2年前から鰓部分にピストルで販売タグを打って出荷しています。出荷先は地元長崎や福岡、熊本の九州地区から関東、関西圏へ広く届けられています。
ブランド名:紀州いさぎ
和歌山県南漁協により同県田辺地方の主要魚種イサキのブランド化を図っています。この海域は黒潮と瀬戸内海が流れ込む紀州灘と呼ばれ潮流れの速いことが特徴。同漁協に水揚げされるイサキは平成23年が63トン。水揚の1割は地元で消費され9割が名古屋や京阪神へ出荷されているそうです。
ブランド認定イサキは手釣りによる漁法と活かしたまま帰港し水揚げ前の統一した活け締めと血抜き、陸揚時に漁協職員による目視確認を行います。
そろそろ仙崎のイサキに移りましょう。当ブログでちょろっと触れたことがありますけど、まだまとまった案内をしていないはず。
仙崎市場のイサキ概況は別掲のグラフをご覧ください。全国的には長崎県がおよそ1100トンの水揚量で首位、次いで山口県のおよそ500トン(平成24年農林水産省漁業統計概報)。市町村別では、
市町村名 トン
1.佐世保市 305
2.平戸市 273
3.小値賀町 265
4.宗像市 161
5.萩市 148
6.長門市 131
(平成23年農林水産省全国市町村別漁業統計、単位:トン)
量的に近年は安定した水揚げを記録し、平成23年は131トンですが豊漁の昨年はおよそ200トン揚がっています。統計資料からもイサキは長崎県五島列島付近と山口県長門・萩沖が国内最大の漁場となっているのが分かりますね。
仙崎のイサキはいまのところ地域ブランドとして確立されておりません。だからといって味が落ちるわけじゃありませんよ。実際、セリ落とされたイサキの行く先は市内より、関西、関東方面向けが多いのが事実。釣りと沖建網で獲れるイサキが多いですね。鮮度落ちが早く活魚の流通がむつかしい魚です。すばやく活け締め後は氷血締めしてセリに立てられます。
旨みといいますか、イサキの成分調査は山口県水産研究センターが測定を行い、詳細なデータを公開しています。これによりますと、脂がもっとものる時期が5,6月。その次は若干落ちるけど3,4月です。7月から翌1月までは平均して5%前後の脂肪量で推移します。
また、たんぱく質は季節の変動が少なく、だいたい20%前後あります。このなかに含まれる遊離アミノ酸成分ではタウリンが抜けて多く、遊離アミノ酸全体の7割を占めていました。タウリンといえば栄養ドリンクに含まれる主成分?!くらいのumisachi知識しかございませんので、すこし調べてみましょう。
正確にいえばタウリンはアミノ酸ではないのですが生体内で有意義な活動を行います。主に体の細胞を正常に保つように努めます。人体をデフォルトさせるといえば分かりやすいかな?一例をあげますと、血中のコレステロールを低下させる働きがみつかっていて動脈硬化を予防する可能性があります。また、網膜神経細胞の再生に関与する働きが確認されていたり、運動中の体内で血糖値が急激に下がるのを防ぐようなことにも関わっているそうなんです。
イサキは仙崎市場関係者からも最高と評価される産卵前の5月から6月上旬が美味。この瞬間を過ぎてしまいましたが近ごろ市場で見かけるイサキはまたサイズが上がってきてます。これから再び脂がのり始めるのは11月頃かと思われますが、今週並んでるイサキは見事なサイズでしたよ~。
参考資料
中脇 章博,山本 健也,l白木 信彦(2013年).イサキの成分分析結果と近赤外分光法による粗脂肪量測定の検討.山口県水産研究センター外界研究部
赤池 昭紀,久米 利明,泉 安彦,小坂田文隆(2010年).網膜神経細胞死の再生・分化を制御する因子.日本薬理學雜誌 135(4) 142-145
西村 直道(2008年).食物繊維およびタウリンの血中コレステロール低下機構に関する研究.日本栄養・食糧学会誌 61(1) 11-19
伊藤 崇志,東 純一(2004年).タウリンの動脈硬化予防薬としての可能性.日本薬理学雑誌 123(5) 311-317