仙崎の真鯛


こんにちは、今日は真鯛の話をしてみたいと思います。
真鯛はとっても名の知れた魚ですから日本全国どの沿岸域にも棲みついていると思われるでしょう。ですが北海道や沖縄諸島ではまず見ることができないのです。分布状況は日本海南部や瀬戸内海に多く、太平洋側ではやや少ないことが分かっています。

鯛といえばメデタイ、祝いの席にかかせない魚ですね。桜を愛でる日本人は、真鯛の持つ姿、形、色にも似たような価値を見出していたのかもしれません。文献によりますと、古くは奈良時代より宮廷の献上品として用いられ、万葉集の中では鯛が庶民憧れの高貴な食材であったことを伺わせる歌がございます。

醤酢に蒜搗き合てて鯛願ふ われにな見えそ水葱の羹(巻16・3829)作者不詳
(ひしおずに ひるつきかてて たひねがふ われになみえそ なぎのあつもの)

現在におきましても、サバやサンマのような大衆魚とは言いがたい雰囲気を醸しだす真鯛、さて都道府県別の漁獲量を調べたところ、山口県は全国第5位の漁獲量です。毎年高いレベルをキープしているのは真鯛の種苗放流による効果を見逃してはいけません。山口県の真鯛種苗生産に対する取り組みは古く、資料が作成された平成5年から毎年130~200万尾を放流しているのです。
また、真鯛は全国で養殖がさかんに行われていますよね。比較で話すと養殖真鯛の収穫量は漁獲量のおよそ4.4倍(平成22年漁業・養殖業生産統計より)。養殖真鯛は愛媛県がほかの追随を許さないほど群を抜いて盛んに取り組んでいます。

では仙崎市場の水揚げはどのくらいでしょうか。平成23年は275トンの真鯛を水揚した長門市が下関市に次いで県内漁獲量の第2位。さらに、同年の全国市町村別水産統計によれば、全国の第15位にあたります。長門市の真鯛ってもっと有名になってもよろしいんじゃないですか?
仙崎市場の真鯛は平均して周年水揚され、煮ても焼いても炊き込んでもおいしく頂ける白身のお魚。料理は当ブログでご協力いただいている仙崎女性部さんの鯛寿しを筆頭に、市内さまざまな鮮魚店や料理処で提供されています。

真鯛は1年で約15cm、2年で約20~25cmに達し寿命はおよそ20年と言われています。ずいぶん長生きする魚であることを知り驚きました。仙崎市場では箱に4尾以上並べられた真鯛を「コダイ」と呼び、それ以上のサイズをタイとして取引し、明確な重量やサイズの基準はありません。産地によりいろいろな漁法で獲られていますけど、長門では80%が沖建網(刺網)による漁獲。それに次いで一本釣り、手繰り(小型底引き網)、船曳網となっています。船上で真鯛を活け締め(延髄切り、血抜き)し、氷を打ってビタのまま市場に運びセリにかけられます。

ここで視点をかえまして、化石発掘は子どもたちの大好きなトレジャーハンティングですよね。「化石発掘」のキーワードで山口県を検索すると、まずは美祢市。太古の潮風を感じる壮大なパノラマ、須佐のホルンフェルスもでてまいります。海幸仙崎、長門市ならではの化石…、ではなく骨探しをご案内しましょう。夏休みの自由研究になるかな?

お魚にはいろいろな形をした骨があるんですよ。かっこいい形、かわいい形、とんがった形、見つけるのが難しい骨もあります。鯛には古くから「鯛の九つ道具」と呼ばれるユニークな形の骨が知られています。

・三ツ道具(みつどうぐ)
・大龍(だいりゅう)
・小龍(こりゅう)
・鯛石(たいせき)
・鯛中鯛(たいちゅうのたい)
・鍬形(くわかた)
・竹馬(ちくば)
・鳴門骨(なるとほね)
・鯛之福玉(たいのふくだま)

と紹介したのは、江戸は神田で八百屋を開いてた奥倉辰行さん(1859年没)。

「水族写真(1857年)」より鯛名所之図。

日本人はおいしく魚を食べながら、同時にこんな遊び方もしていたのですね。

参考文献
吉村 拓,鈴木 健吾(2012年).平成23年度マダイ日本海西部・東シナ海系群の資源評価.西海区水産研究所
栽培漁業のてびき(改訂版)マダイ(2012年).山口県水産振興課 26-35

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