仙崎市場に限らず、市場関係者と話をしていてよく耳にすることば、
「ビタでつける」
ビタ?ってなんだろう。
ビタって魚がいるのでしょうか?
ビタミン?
びたびたに浸した状態?
少し遠回りしてお話しします。海の中を泳いでいた魚を釣り上げたり、網ですくったりして取った漁船は、活間(いけま)で活かしたままか、氷を打ってから港に戻ったりとさまざま。活魚を除き締めた直後の魚は身が柔らかくしなっていますけれど、ほっとけば数時間で硬直します。さらに数時間たつと再び柔らかくなりますが、その頃の身は弾力を失っているのです。
身が柔らかい状態
⇒ 弾力がある = 死後直後①
⇒ 弾力がへる = 死後数日後③
身が硬直した状態
⇒ 身がかたい = 死後数時間②
魚に限らず生体の筋肉には、エネルギーの元となるアデノシン三リン酸(ATP)が含まれます。この物質は鮮度の指針となるものです。
つまり、生体の死後はATPが作られなくなり、徐々にその数は減少します。①
ATPが低濃度の状態でタンパク質は硬くなってゆきます。②
細胞内の酵素が活動し始めると魚肉の分解が始まります。③
魚の鮮度を保つということは、いくつかの方法がございまして
1.①の時間経過を遅らせる
2.②の状態を低温により長く保持する
といったことが挙げられます。魚は常温で放置されると①が急激に起こりすぐに②へ移ってしまうため、ここをゆっくり経過させることが大事です。具体的には獲った魚の締め方によって随分違います。 2番目に死後硬直の保管状態がよいと、魚肉内では旨み成分イノシン酸が増加し熟成がすすむのです。さらに、最近では漁獲からの加工・冷凍技術が向上し、即殺直後のATPが高い数値の状態で凍結が行われるようになりました。これによって冷凍焼けによる劣化をいくらか回避できることがわかってきました。
身が柔らかい魚も、締めた直後と数日後ではまったく異なることが分かりますね。目利きの良いプロのバイヤーは瞬時に判断します。①と③の違いは、魚を捌くため包丁を入れた瞬間に分かるといわれます。属に活魚と呼ばれるのはいけすで生きている魚のほかに①の状態までを指し、②から③は鮮魚と区別されているのです。
長くなりましたね、ビタとは①の状態の魚を差し、漁業者はこの状態でセリにかけられるよう時計を詰めて作業してるんです。
間違ってもびたびたに解けた氷の上に並べられた状態じゃないことをお断りします(笑)。また、延髄締め、血抜きだけじゃなく、神経抜きを施すとビタが長く保持できるという研究報告もございます。
ところで高知県では赤シタビラメのことをビタと云うそうですが、鮮度のビタって地域変われば何と呼ばれているのでしょうね。