こんにちは、今日は7月の魚、大羽イワシについて話してみたいと思います。日本近海のマイワシは回遊の周期があるみたいで、一定量のきまった水揚げがある魚じゃございません。参考までに農林水産省の海面漁業生産統計調査の資料から抜粋すると、平成23年は10年ぶりの大漁でした。都道府県別には千葉県、茨城県、島根県が水揚げ量のトップ3。
ところで、仙崎はケンサキイカやマアジの水揚げが県下有数の漁港なんですが、漁獲「量」で見るとイワシ類が圧倒してるんです。「類」というのはなんじゃ?と突っ込みましたね!
いろいろありまして、大きなもの小さなもの種類が微妙に異なるもの、煮干しにしてもその味は随分と違うようで、加工の専門家のお話を伺っているだけで、トリビアの泉にトリップしてしまいます。
さて、仙崎では大きく次の7魚種がイワシ類として水揚げされ、市場でのセリも分けて行われています。
- ウルメ
- カタクチ
- キビナゴ
- シラス
- ニガ
- ヒラゴ
- 大羽イワシ
- 中羽イワシ
それぞれについて解説を加えますと長々となってしまうため、今回は大羽イワシについてですね。ニガについては当ブログ過去の記事をご覧ください。 国内でイワシといえば、おおかたが「マイワシ」、「ウルメイワシ」、「カタクチイワシ」のことを指します。 ちょっと学術的になりますが、
見た目も生物学的にもひじょうに近いんですね。そこでマイワシは魚のサイズによって大羽、中羽、ヒラゴと分けてセリにかけます。
- 大羽:およそ20cm以上
- 中羽:およそ10~20cm
- それ以下をヒラゴ
結論をいうと大羽イワシとは、大きなサイズのマイワシのことなんです。仙崎出身の詩人、金子みすゞさんの一篇に『大漁』という作品がございます。
朝焼小焼だ
大漁だ
で始まるこの詩、気付いた方はいらっしゃいますか?朝焼けの中、たくさんのイワシを積んだ漁船が港に戻ってきます。俳句の季語では夏を表す「朝焼け」を冒頭に持ってきて、みすゞさんはイワシ船の帰港を表現しました。5時過ぎに夜は明け、朝日は梅雨の前線が残る東の空を赤く照らしている。通方面から戻ってくるイワシ舟は、その下をゆっくりと傾きながらすべるように近づいてくる風景が短い文章に凝縮されてますね。おそらく彼女が詠んだイワシとは仙崎で漁獲量の多いカタクチイワシの幼魚(ニガ)なのではないでしょうか。大羽もカタクチも仙崎じゃ夏の魚。でもイワシの季語って秋なんだってね、umisachiいまいち納得できないです(笑)。マイワシの本場、太平洋側の千葉や茨城でも「入梅イワシ」と呼ばれ脂がのって美味しいのは梅雨時の今でしょ!?
国内のことばかり書きましたけど、マイワシは世界中で食べられてます。日本料理だと何でしょうね、塩焼きや煮付けが一般的ですが、欧米の有名な料理や加工品を拾い上げてみましょうか。
オイルサーディン…オリーブオイルで煮込む加工品の代表
アンチョビ…原料はカタクチイワシですけどね、塩漬けイワシはさまざまな料理に使われます
Pica Pica(ピカピカ)…ドミニカ料理でイワシの炊き込みご飯
マリネ…スペイン、イタリアなど地中海沿岸でポピュラーな料理、白ワインビネガーを使います
ブランダード…南仏プロバンス地方では塩漬けのタラを使いペーストにして味わいますがイワシでもいけます
ところ変わればイワシも千変万化。西欧ではオリーブオイルと塩に漬け込んで仕上げ、中華料理ではピリ辛風味のあんかけとなります。ほとんどがイワシ独特の臭みを香辛料などで包みこみ調理されますけど、和食では醤油や生姜がこれにあたるのでしょう。超がつくほど鮮度落ちの早い魚ですから、唯一といってよいと思いますが刺身で消費されるのは日本だけ、それも漁場に近い近海の街とされます。仙崎産の大羽イワシが丸のまま鮮魚売り場に並んでいたら、わさび醤油で味わえるのも長門だけということになるでしょうね。