今日もケンサキイカの話題でございますよ。長門でイカ釣り漁師の数が一番多いのは、仙崎の通(かよい)支店ですが、今からお話しするのは大日比(おおひび)地区に伝わる素敵なストーリーです。
その前に、仙崎の大日比といったら「夏蜜柑原樹」ですね。隠しても仕方ありませんのでumisachiくんはカミングアウトしますけど、長門市に暮らしていながら「夏蜜柑原樹」を知りませんでした!地元の漁師さんにケンサキイカの話を路上で聞いていたちょうどその時、1台の観光車両から首を出したドライバーが、
「夏蜜柑原樹はこのあたりですかいね~」
それでイカの取材は中断となりまして、umisachiくんも原樹を拝見。
このあたりで夏みかんと言いましたら、萩と答えるかたがたくさんいらっしゃいます。地元の方の説明を聞きながら原樹を眺めていると、武家社会の頃より夏蜜柑の苗木は進物としてたいへん重用されていたことがわかります。今も大きな実を灯す古木原樹はなんと凛々しいことでしょう。
えー、本題に戻しましょう、青海島の大日比地区に古くから伝わるおはなしです。この地にある西圓寺という浄土宗の古刹は、古くから念仏道場として広く知られていました。修行の小僧も数多く、毎夕、寺から流れる念仏を聴衆していたのは、どうやら門下に暮らす人々だけでは無かったようです。
といいますのは、普段浜辺に近づくことの無いケンサキイカが、どういうわけか毎年梅雨入りするころから、7月中旬まで紫津浦(しずうら)に入ってきます。水深20mあるかないかの浅瀬は海藻が生い茂り、産卵のために寄ってくるものかもしれません。浜辺近くにイカ釣り漁船の漁火が現れるこの季節になると、いつ頃からか大日比のひとたちは言いました。
「イカも念仏が聴きたいんじゃろう」
今では念仏イカと言われることが少なくなりましたが、信仰の篤い民による素敵な名称は後世に伝えてゆきたいものですね。